designer : Hideki Takamatsu
世田谷区に「桜」という美しい名を持つ地域がある。その入り組んだ住宅街の一角にこの家は建てられた。
設計の依頼は、以前講師をしていた短期大学の卒業生からで、近々子供が生まれるのを機に実家に戻り、ご両親家族と2世帯住宅を建て共に暮らすということであった。
計画地は前面道路から約10m奥まった旗竿敷地であり、周囲は敷地境界ギリギリまで建てられた住居で全て囲まれている。厳しい建築条件の中でボリュームを確保するため、建ぺい、容積も限界まで、高さは高度斜線に沿って屋根形状を定めた。1階の採光は2階まで抜けるテラス(中庭)を南側に設けて解決したが、それは同時に両家族のコミュニケーションの場にもなっている。条件のあまり良くない1階内部空間は、設えた収納家具に合理性を持たせ、天井まである引き込み戸により個室とリビングが一体となることで圧迫感を感じさせないよう配慮した。対して2階は屋根形状に沿った勾配天井によって開放的な大空間を実現している。
この家はある意味でまだ完成していない。今後、建主により子供の成長に合わせて様々な手が加えられていくと思うが、その経過を想像すると楽しみである。
所在地 : 東京都世田谷区
用 途 : 専用住宅 二世帯住宅
設 計 : 高松秀樹
施 工 : ヤマゼン建設有限会社
撮 影 : 遠藤淳一